取材レポート
2023.04.21

誰もが即戦力に! 発送作業の品質を保つDX

イーゲート株式会社
取締役社長 野坂鐵郎さん(右)
ネット販売チーム サブリーダー 田嶋和美さん

 

イーゲート㈱(福井市川合鷲塚町40―10)は、女性用下着やスポーツウェアなどアパレル製品の企画・製造を行っています。2013年よりネット販売を開始、自社ブランド製品を全国展開し、福井の繊維の魅力を発信しています。同社は在庫管理システムの導入によって、製品の入庫から出荷までの管理における生産性向上を実現。その経緯を、システム導入担当の田嶋さんにお聞きしました。


業務の属人化と発送ミスが課題に

 

当社はEC事業の展開・拡大に伴い、3,300種類、40万点もの膨大な製品を取り扱うようになりました。以前はこれを担当者一人がロケ地(棚)や倉庫を回って在庫チェック・補充していました。ECモールのセールの時期になったりすると受注が多くなり、梱包や発送作業に十分に手が回らなくなります。ですので、他の部署にも応援を依頼するのですが、どこにどの製品のロケ地・在庫があるのか特定の社員しか把握できておらず、人数がいても作業効率が上がらないという状況が続いていました。

また、梱包内容の確認は印刷した納品書や商品下げ札を慌てながら目検で行っていたため、誤送による返送処理の手間が発生していました。さらに悪いことに、在庫不足が梱包時に発覚し、お客様にご迷惑をかけることもありました。目視による在庫管理に限界を感じた私たちは、WMS(在庫管理システム)の導入を進めることとなりました。

 

作業工程の課題と理想を全社員が参加して見える化

 

2020年に「IT導入補助金」を活用し、WMSの「ロジザード」を導入しました。これで製品の在庫数をパソコン等の端末から、誰でも把握できるようになりました。

 

「ロジザード」の在庫管理画面。製品のID を入力すれば、
どのロケ地にいくつ在庫があるのか確認できます。

しかし、バーコードを専用のハンディスキャナーで読み取るシステムなので、運用するためには製品一つ一つに、さらにロケ地や倉庫すべてにバーコードを貼り付ける必要がありました。普段の業務とは異なる負担が増えることを嫌がる従業員もおり、また、社内からは慣れない作業工程が増えることに反発する意見も挙がりました。

そこで入庫から出荷に至るまでの作業フローを「現状」と「あるべき姿」に分け、大きな模造紙に書き込んで可視化、システムを導入する意図を全員で共有しました。それにより品質向上はもちろんですが、現場作業が楽になるんだということを理解してもらえ、システム変更の理解浸透に繋がりました。


 

同社のロケ地。以前は段ボールが地面に散らかっていましたが、
バーコードとロケ番号が割り振られたことで整備されたレイアウトに
変えることができました。

 

働く人を楽にでき、生産性と品質向上も実現

 

WMS導入後は、出荷ミスが激減し、在庫補充に要していた時間も丸1日から1~2時間程度にまで短縮できました。そして最大の収穫は繁忙期において、他の部署のメンバーや派遣社員の方がサポートとして入っても作業効率を落とすことなく発送することが可能になったことです。平日15時に受注受付を締めるのですが、その日の16時には製品をお客様に発送することができています。お客様に迷惑をかけることが少なくなったことはもちろんですが、「作業が楽になった」と声をかけてくれる従業員もいて、非常に嬉しく思います。

 

梱包時にもバーコードをスキャンしながら作
業しています。発送内容が間違っていた場合、
ブザーが鳴って誤発送を防ぎます。

 

ありがたいことに、ITベンダー側がこちらの要望に合わせてシステムのカスタマイズに対応してくれました。システム開発者と密にコミュニケーションを取り続けたことも、新しいシステムが社内に浸透するのを早めた要因になったと思います。ちなみに、ITベンダーから好事例として紹介していただき、当社現場を見学に来られた方もいらっしゃいます。

 


梱包時にもバーコードをスキャンしながら作
業しています。発送内容が間違っていた場合、
ブザーが鳴って誤発送を防ぎます。

 

他にも勤怠管理システム、FAXや給与明細の電子化等が進んでおり、社内でデジタル化への意欲が高まっています。5月からは納品書を完全にデータ化する予定で、印刷費の大幅なコスト削減を見込んでいます。今後も現場に目を向けながら、データ化によって得られた分析結果等も活用しつつ、連鎖的な改善活動を続けていきたいと思います。