取材レポート
2022.12.23

DXで安全と効率化の二刀流 ~これからも物流の担い手であるために~

ラニイ福井貨物株式会社
代表取締役 藤尾秀樹 さん(右)
DX推進室 室長 川岸道子 さん

 

全国各地に多種多様な製品・商品を配送するラニイ福井貨物株式会社(福井市和田中町113-1)は、独自の経営哲学として顧客や他の従業員のことを思って行動する「利他の心」を大切にしています。同社では、トラックドライバーの人手不足や運転意識の改善等の問題に対応しつつ、品質管理の徹底と効率化を目指すため、令和3年4月に「DX推進室」を設立。今回は、藤尾社長と川岸DX推進室長から同社の取組みについて伺いました。


「2024年問題」への対応とDX化の遅れを痛感

 

当社では、物流の担い手としてお客様により貢献できるよう、単に配送するだけではなく、利他の心を持って仕事をすることを従業員に広めています。数年前、福井が豪雪に見舞われた際には、当社のドライバーが顧客のために自主的に除雪を行うなど、その精神がしっかり社内に浸透していると手ごたえを感じています。

しかしながら、昨今の物流業界は危機的状況に瀕しています。他の業界で先駆けて施行された働き方改革が、2024年4月から物流業界にも適用されます。「時間外労働時間の上限規制」により、慢性的な課題であったドライバーの人手不足に追い打ちをかけることは必至です

残業時間を把握・管理するとともに、これまでと同様に安全運転を徹底させる必要があります。自分達がデジタル化が遅れているという危機感もあり、DX推進室を立ち上げました。

 

クラウドシステム導入で配送状況を即座に把握

 

以前はドライバーの運転記録を確認するのに、ドライブレコーダー(ドラレコ)のSDカードから記録映像をチェックしていました。しかしこれでは、SDカードを事務所まで持っていく手間がかかる上に、全ドライバーの運転映像を視聴するのに時間がかかってしまいます。そこで、クラウド型デジタルタコグラフ(デジタコ)を導入しました。

デジタコは、トラックの運転速度や走行時間・距離等の情報をグラフ化できる機器なのですが、クラウドシステムであるために事務所にいながらドライバーが今どこを走行中なのか、また休憩中なのかも把握できるようになりました。さらに急発進していないか、車間距離を詰めすぎていないかといった、ドラレコの映像を見ないと気が付かない部分もリアルタイムで表示されます。

ちなみに、運転後には点数がつけられ、配送を終え会社に戻ってきたドライバーにその日の運転を振り返りをしてもらっています。安全運転ができていることを管理側にも共有されていると分かるので、ドライバーのモチベーションアップにも繋がっています。

 

デジタコの管理画面。事務所のモニターでリアルタイムに位置情報を把握しています。

 

また、デジタコ導入によって正確な勤務時間を記録することも容易になりました。これにより、普段事務所にいる時間の方が少ないドライバーに対しても、管理側がきちんと労働時間を把握し、明確に共有することができました。

元々、事故のない安全な会社を目指すために、安全方針を全社員に徹底して周知していましたが、これまで以上に安全運転に磨きがかかり、事故が激減しました。これもデジタルツールによって得られた成果だと思います。

 

WMSの管理チーム。ドライバーの配送をサポートします。



アルコールチェックと同時に、免許証をかざすことで出勤に。タイムカードの代わりになっています。

 

利他の心が社内DXを促進させる要因に

 

まだまだ改善すべき部分もありますが、DXによって少ない人数かつ短時間で効率的に業務ができるようになっています。DXとはイノベーションによって結果を出すことだと考えています。その結果を出すためには経営陣のマインドも重要ですが、従業員一人ひとりに、人のために行動する利他の心をしっかりと養ってこれたことが功を奏したと思います。

最近では、ウェアハウスマネジメントシステム(WMS)という倉庫管理システムを導入しましたが、その際にも従業員が積極的に操作方法を学ぶ姿勢を見せてくれました。おかげで効率よく荷物をピッキングでき、ドライバーの待ち時間を削減することができています。

物流業界には「残業が多く、賃金が安い」というイメージがつきまとっています。そんなネガティブな印象を払拭できるように、DXによって地域を支える物流業界にイノベーションを起こし、会社一丸となってこれからも精進し続けたいと思います。