3月15日(水)、中小企業がDX推進の第一歩を踏み出すためのヒントを探る、デジタルものづくりデジタル勉強会「DX寅の穴」の第4回を開催しました。最終回となる今回は、覆面DXコンサルタントのマスクド・アナライズさんが講師として登壇。ITベンチャー勤務経験を活かし、様々な企業のDX支援や人材育成等に携わってきたマスクドさんから、DX成功の秘訣についてお話しいただきました。
データを収集する意味と目指すべき「小さなDX」とは
講演するマスクド・アナライズさん。DXに関する記事や書籍の執筆も行うなど、 コンサルティングやセミナー講師以外にも幅広く活躍されています。
はじめに、マスクドさんより「『小さなDX』のススメ」と題し、ご講演いただきました。その中で、DX推進を阻む3つの壁として「人・歴史・データ」を挙げています。現場におけるITへの関心が低い、勘と経験に頼りがちな組織体質、そして部署間でデータの情報共有がされないといった背景がデジタル化を遅らせる要因となっています。
マスクドさんは、「DXに取り組む企業は規模を問わず成果を出している」と説明し、「データがあれば何でもできる」ことを強調しました。蓄積されたデータを分析することで、今まで一部の従業員の頭の中でしか記憶されてこなかったノウハウが会全体に「見える化」されます。具体的な効果について、福井県民にとって馴染み深いな名産品で例示していただきました。
眼鏡であれば研磨・ツヤ出し等の熟練の技、へしこであれば絶妙な塩加減で味付け等が数値化(見える化)されることで、技術や味、レシピを継承することができます。ひいては、データが会社や商品のブランドを守るための根拠になります。
しかし、DXで大きな成果を上げるためには試行錯誤を繰り返すことが大切です。マスクドさんは「DXとは長い道のり」と捉えており、中小企業は、低予算(いきなり大きなコストをかけない)・低姿勢(周囲にメリットを示す)・低カロリー(一部の業務から少しの手間で成果を出す)の「小さなDX」を目指すことを提唱しています。
社内からデジタル人材を生み、社外からDXのヒントを得る
次に、デジタル人材は「外部からIT専門職を雇用すべきか、それとも社内で育てるべきか」というトピックについて、社内で「DXマネージャー」を育てるべきとの見解を示しました。
DXマネージャーには経営層と現場の間に入り、 DXによって可能になること(メリット)を社内に落とし込む役割が期待されます。
現場の立場・業務への理解があり、従業員の意見を吸い上げつつ課題を抽出でき、さらに経営層に対しても課題解決に向けた提案を行うことができる人材がキーマンとなります。
また、デジタル人材育成の一環として、ITに関する基礎知識が習得できる「ITパスポート」の取得も奨励していました。
しかし、社内だけの知見ではアイデアが閃かず、行き詰ってしまうこともあります。マスクドさんは、過去に「DX寅の穴」にて事例発表を行った県内企業のデジタル化の取組みをピックアップ、目標とすべき姿として紹介しました。他社のデジタル化事例に目を向けることで、新たな気付きや発想が得られます。
講演の後、企業のIoT活用を支援する株式会社ソラコム(東京都)の伊佐政隆氏から、 全国のIoT導入事例を紹介。「毎日起こっていることをIoT化すると結果が出やすい」 とアドバイスをいただきました。
DX推進はチーム「オール福井」で
最後に、「『小さなDX』に向けて明日から実践したいことは何か?」をテーマに参加者の意見を募り、全員でシェアしました。「改めて現場を知ることから始めたい」「まずは小さな成功体験を積みたい」といった回答が挙がる中、「社内政治が難しい」と憂慮する声も見受けられました。
マスクドさんは「大変だが、社内の人間が一歩を踏み出さなくてはならない。社外の人間であるIT専門家たちの力を借りることで客観的な意見が加わり、背中を押すことに繋がる」と専門家や支援機関を上手に活用するよう提案されました。
その他、「どんなデジタルツールが自社に適しているか分からない」という問いに対し、ITベンダーに直接相談するのも良いが、既にツールを導入している企業に使い勝手等を聞いてみることが良いとし、「ぜひ個社の取組みには積極的に公開し、企業の壁を越えて、福井全体でDXを進めていってほしい」と締めくくりました。
参加者がアンケートアプリから投稿したコメントは、大型スクリーンで共有。 マスクドさんと当所IT専門相談員である佐藤宏隆さん(右)によるトークセッション形式で、 課題とその対応策について解説されました。