取材レポート
2022.03.10

見た目も中身もスマートに!製造業のECサイト戦略

GARAN ASSOCIATES
代表 吉田 直哉 さん
(福井商工会議所IT 専門相談員)

 

まもなく新年度を迎えますが、コロナ禍に終わりが見えず、引き続きウィズ・コロナを前提に事業計画を考える必要があります。D2C(中間流通業者に製品を卸さず、直接顧客に販売すること)というビジネスモデルを実践する企業も増えており、当所にはEC(通販)サイトの運用に関する相談も多く寄せられています。今回は様々な企業のECサイト構築に携わってきたITコーディネータの吉田直哉氏から、支援事例をもとに製造業のECサイト活用方法について伺いました。


顧客との距離を縮めるはずが…
情報過多は顧客を遠ざける

 

ホームページやECサイトは上手く運用できれば、非対面でありながら新たな販路を開拓するツールとして効果的です。ただし、そのサイトを見る顧客の目線に立ち、どんな情報(製品)が欲しいのかを整理する必要があります。自社製品をすべて網羅できるよう、ついつい大量の情報を1つのサイトに詰め込んでしまいたくなりますが、結果的に顧客の本当に欲しいものとの距離を広げてしまう可能性があります。特にECサイトの場合は、買いたいものがすぐに見つかりにくくなると機会損失に繋がります。

今回は㈱ミヤゲングループさん(敦賀市山泉7-15- 3)の課題解決に向けた取組みについてご紹介したいと思います。同社はポリエチレンやポリプロピレン袋等のメーカーです。オーダーメイドでの製造も請け負っていますが、自社で対応しきれない場合は同業他社と連携し、持ちつ持たれつの関係で補完し合っています。現在はECサイトで「店のロゴ等を入れたオリジナル品」と「一般的に流通している既製品」を分けていますが、元々は「袋探(ふくろたん)」という1つのサイトで色んな商品をまとめていました。はじめに私に相談があったのは、自社ECサイトのSEO対策(検索上位に表示する方法)についてでした。

 

セミオーダーまたはフルオーダーでオリジナル袋を注文できます。
子供用に購入する親御さんもいらっしゃいます。

 

当時のサイトには製品やトピックス等の新着情報がどんどん付け足されており、複雑なレイアウトになっていました。ページの更新手順も特定の従業員しか理解できておらず、属人化による弊害が如実に表れていました。

 

細分化することで効率よく
エンドユーザーにアプローチ

 

そこで、私から提案したのは、サイトを分離させ効率の良いサイトを構築することでした。まずは顧客にとって使いやすくするためにはどうしたら良いか明確にするところから始めていただきました。具体的には、商品・製品ごとにエンドユーザーの元に届くまでの流れを図式化することです。社内で話し合っていただいた結果、ECサイトを2つ作ることになり、情報の振り分けが必要となりました。

製造業のECサイト運用にありがちなことですが、製造部門が無関心なことが多いように思います。サイトに記載がある通り納期がしっかりと守れるのか、オーダーメイドであるならばイメージ通りの製品が作れるのか。24時間いつでも注文が可能なECサイトですが、通販担当者と各部門との関係を密にしなければなりません。ネットショッピングが当たり前な現在において、それらは顧客満足度に影響しやすい要素です。同社の宮元社長は「社内の情報共有の在り方を考えていく良いきっかけになった」と話していましたが、「業務の棚卸し」にも結び付いているのです。結局、構想に1年、サイト制作に1年とかなりの時間を要しましたが、令和3年11月から自社オーダーメイド品に特化した「刷りエール」を開設しました。

 

同社EC サイト「刷りエール」。最適化されたことで「耐油平袋」(写真右)という製品名ではなく、「バーガー袋」や
「タイ焼き袋」などのニッチなキーワードでも検索されるように。

 

ECサイトを細分化したことにより、ハンバーガーやタイ焼き等のテイクアウトに用いられる「耐油平袋(たいゆひらぶくろ)」を、エンドユーザーである飲食店の方から直接ネット購入してもらえるようになりました。

 

ECサイト運用も
マーケティング分析が重要

 

国や地方自治体等の様々な補助金を活用してECサイトの開設や改修を検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか。顧客がエンドユーザーとなることによって、利益率が高くなるほか、顧客の動向を分析しやすくなります。しかしながら、エンドユーザーのペルソナ(自社の製品を購入するユーザー像)がはっきりしていなければ、失敗に終わってしまう可能性が高くなります。どうすれば顧客が注文しやすいサイトになるか、しっかり検討していただきたいと思います。

コロナ禍における新たなチャレンジや事業の再構築として、ECサイト開設に乗り出す企業が多く見られます。前向きな姿勢は素晴らしいですが、それにより流通の仕組みが変わることで、既存の取引先との関係も変化することがありますのでご留意ください。